スマートグラスと聞くと、サングラスみたいな黒くてごつめのフレームを思い浮かべる人が多いんじゃないでしょうか。微ブログで以前取り上げたVITURE Beastもそっち側で、目の前に大きな画面を浮かべて動画やPC作業をするためのガジェットでした。

今回取り上げるのは、重さが公称で約38gのスマート眼鏡。VITURE Beastの公称88gと比べると、半分以下の重さです。
作っているのは福井県鯖江市に本店を置くjig.jpで、製品名は「SABERA(サベラ)」。2026年10月27日に一般販売が始まり、価格は税込92,400円。翌28日以降は家電量販店や眼鏡店の店頭にも順に並ぶ予定。
9万円台で買うかどうか迷っている人が、自分の使い方と度付き込みの予算で決められるように、jig.jpの発表文(2026年10月20日)と公式サイトのFAQ・販売ページ・ユーザーマニュアルから読み解いていきましょう!
SABERAは動画を観る眼鏡ではなく文字を浮かべる眼鏡
VITURE Beastのような「大画面を観る」タイプとは別物です。
SABERAの表示は右目側だけの単眼式で、色はグリーンの単色。jig.jpの発表文でも「視界内に文字情報を表示するディスプレイを搭載したスマート眼鏡」と説明されていて、通知や翻訳の文字、ナビの矢印を視界に重ねて見せる仕組みです。マニュアルにも「写真や画像は表示されません」とあり、映画を観たりPCの画面を広げたりするための製品ではありません。
レンズの中の表示を担うのは、Cellidの導波路(ウェイブガイド)という光学技術です。
通知の数行を視界に出すための表示なので、数字もそのつもりで読むのがよさそう。マニュアルの仕様の章にはこうあります。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 表示方式 | 単眼(右目側)・Micro LED・グリーン単色 |
| 解像度 | 640×480(0.13インチ、256階調) |
| 視野角 | 30度(対角) |
| 最大輝度 | 1,500nit |
最大1,500nitでも、屋外ならどこでも見えるわけではないよう。トラブル対処の節には、“強い直射日光の下では見えにくくなるので日陰での利用をすすめる”、という一文あり。
眼鏡として毎日かけられるかの土台は、フレームの作り。デザイン監修は、1984年創業の鯖江の老舗眼鏡メーカー、ボストンクラブです。
販売ページには「レンズ込みで重さ約38g程度」との表記。度付きレンズに入れ替えたときの重さは、公式の案内には見当たらなかった。
参考までに、VITURE Beastは公称88gで、私のはかりだと97.1gでした。別ジャンルの製品なので並べるのは乱暴でしょうが、数字だけ見れば、眼鏡の側にぐっと寄っていることがわかる。
カメラとスピーカーは非搭載。マイクは2基あって、翻訳・文字起こし・AIアシスタントの音声入力に使います。カメラはあえて載せず、周りの人のプライバシーにも配慮した、とメーカーは説明しています。
電化ねこ音も出んし動画も観られへんとな? ほな何に使うんや?
使い道は通知・翻訳・人前で話す場面
スマホに専用アプリを入れて、Bluetoothでつなぐ仕組み。プロダクトページは、通知・ナビ・翻訳・文字起こし・原稿表示(テレプロンプト)・AIアシスタントの6つの機能を「全て無料でお使いいただけます」としている。
ただし無料がいつまで続くのかは書かれておらず、「※今後の改良・最適化により変更となる場合がございます。」という注記つき。アプリの通信費は利用者持ちというわけですな。
通知とナビをスマホを出さずに見る
打ち合わせ中にスマホを伏せたまま、誰から連絡が来たかだけ知りたい。そんなときに使うのが通知の機能で、LINE・Messenger・InstagramなどのSNS、ビジネスチャット、メールの知らせを視界に出せる。通知の本文はスマホとSABERAの中だけで処理され、jig.jpのサーバーには送られません。
ナビを使うと、目的地までの進行方向と距離、残り時間、小さな地図がレンズに出ます。移動手段は徒歩・自転車・車から選べて、歩きながらスマホの地図を見続けなくて済む。車や自転車の運転中はナビ以外の表示を使わず、ナビも注視しないように、と念を押す注意書きもありました。
翻訳と会議の文字起こし
職場や観光地で外国語で話しかけられたら、翻訳の出番。周りの人の話を訳して、レンズとアプリに表示します。対応言語は42言語(FAQとマニュアル)。プロダクトページには「スマートフォンを共有すれば、相手との双方向のコミュニケーションにも対応します」ともあります。
会議で発言を追いきれないときは文字起こし。会話をリアルタイムで文字にして記録し、結果は自分にだけ表示されます。終わった内容はアプリに保存され、あとから読み返せる。聴覚に制限がある人のサポートにも使える、とプロダクトページにはありました。
話すペースで流れる原稿とAIアシスタント
プレゼンやスピーチで手元の原稿を見なくて済むのが、原稿を視界に出すテレプロンプト。プロダクトページの説明では、AIが話すペースを検知して、声に合わせて原稿を自動でスクロールしてくれる。原稿はアプリで作って登録しておきます。
AIアシスタントは、右のつるのセンサーを1回タップしてから話しかけると、答えがレンズに出る。アプリに文字で打ち込んで聞くこともできます。
現時点では、私はこの手のスマートグラスをまだ使ったことがないんですが、日常使いとしては通知とナビはまじで便利そう。ただ、ナビの方向やGPSの精度がどこまで正確なのかと、スマホに依存せずどれだけ使えるのかが気になるところ。
翻訳と会議の文字起こしも、どこまで実用性が確保されているかが、SABERAの商品価値を測るうえでの大きなポイントとなるでしょう。
毎日使う前に知っておきたい条件
スマホはiOS 18.2以降かAndroid 12以降で、ネットはスマホ経由
アプリはiOSとAndroidの両方に対応。マニュアルの対応表ではiPhoneがiOS 18.2以降、AndroidがAndroid 12以降(APIレベル31以降)。どちらもBluetooth Low Energyに対応している必要があります。
Bluetooth Low Energyは、ここ10年ほどのスマホならほぼ全部が対応している機能なので、気にしなくて大丈夫。実際に引っかかるのはOSのほうで、iPhoneならiPhone XS・XR以降とiPhone SE(第2世代)以降、AndroidならPixel 3やGalaxy S10以降のように、Android 12以降に上げられた機種が目安です。迷ったら、設定アプリでOSのバージョンを見るのがいちばん早い。
使い始めるにはアカウント登録が必要で、Google・Apple・メールアドレスのどれかで作る。アプリの対象は13歳以上。一度につなげるスマホは1台だけなので、家族で回して使うなら切り替えの手間を見込んでおきたい。
6つのうち翻訳・文字起こし・AIアシスタントは、ネットにつながっていないと動かない。
SABERA本体はWi-Fiにも携帯回線にも対応しておらず、通信はすべてペアリングしたスマホ経由。音声はjig.jpのサーバーを通って外部の音声認識や翻訳のサービスに送られるので、電波の悪い場所では認識が止まる場合があります(ユーザーマニュアルの7.2節・11.5節・12.2節)。
電池は通常約12時間で、本体だけでは充電できない
電池の持ちは、マニュアル・発表文・販売ページの3か所が通常約12時間、最大約14時間。販売ページの表記は「標準12時間/最大14時間稼働」。マニュアルは、表示機能の使い方や通信の状況、周りの温度で変わる目安としています。
ところがFAQだけは、通常使用で8〜12時間、表示をあまり使わない場合で最大約14時間という書き方。最大は4か所とも同じで、通常の下限だけが短い。長い日に使うつもりなら、FAQの下限の8時間で見積もっておくと余裕が持てます。マニュアルも、長く使う日はこまめにケースへ戻して充電するようすすめています。
充電は充電ケースに入れて行う方式で、本体だけでは充電できません。本体にケーブルを挿す端子は無く、鼻パッドの付け根にある接点からケースの電気を受けます。電源を入れたり切ったりする操作も無く、ケースにしまえば充電が始まり、電池が切れたら止まる割り切った作り。
本体の充電は約50分、ケース自体の充電は付属のUSB Type-Cケーブルで約2.3時間。満充電のケースからは本体を約12回充電できるので、数字の上では数日の出張でもケーブル無しで回せます。そのかわりケースの重さは約151gあり、持ち歩くならその分が荷物に加わります。
電池は自分では交換できません。持ちが極端に短くなったら問い合わせ窓口へ、とFAQにあります。



有償で交換してくれるということか?
防水性能はどうなってる?
FAQの答えは「非防水です」と一言。雨や汗、入浴やプールで濡らさないように、という注意つきです。仕様表でも非防水で、IP等級の認証は取っておらず、充電ケースも完全防水ではありません。
夏の外回りや、汗をかく運動中にかけるつもりなら覚えておきたいところ。
海外では使えない前提
ここは読み落としやすいところ。FAQによれば、販売は日本国内向けのみで、海外の法規制には対応していません。技術基準適合証明(技適)も国内でのみ有効なので、海外で使うなら現地の法令を確かめてください、という案内です。
ところがどっこい、プロダクトページの方では、翻訳機能の使い道に「海外旅行」を挙げているんですよね。翻訳目当てで海外に持っていくつもりの人は、買う前にサポートへ聞いておくのが確実です。
度付きとサングラス込みなら予算は約12.5万円
本体のセットは税抜84,000円、税込で92,400円。度付きレンズとサングラスはオプションで、公式ECの価格は次のとおり。
| 品目 | 価格(税込) |
|---|---|
| SABERA スマート眼鏡セット(SABERA-J1-GLASSES) | 92,400円(税抜84,000円) |
| 度付きレンズ(近視・乱視) | +22,000円 |
| 薄型レンズ(屈折率1.67)にする場合 | さらに+3,300円 |
| クリップオン式サングラス(ケース付き) | +10,890円(税抜9,900円) |
度付きレンズとサングラスを両方付けると、標準レンズで税込125,290円、薄型レンズなら128,590円(上の表の価格から計算)。眼鏡として毎日かけるつもりなら、こっちが実際の予算になりそうですな。
家電量販店の価格とポイント還元は、各店のページで見比べてください。
同梱物は、眼鏡本体と充電ケースを兼ねた眼鏡ケース、USB Type-Cの充電ケーブル、眼鏡拭き、説明書類。USBの電源アダプタは入っていないので、手持ちのものを使います。外箱は裏返すと鏡として使える、という遊び心つき。
公式ECの度付きレンズは近視と乱視まで
度付きレンズを作れる範囲は、こう決められていました。
| 項目 | 対応する範囲 |
|---|---|
| 球面度数(SPH) | 0〜-10.00(0.25刻み) |
| 乱視度数(CYL) | 0〜-6.00(0.25刻み) |
| 乱視軸(AXIS) | 0〜180 |
| 瞳孔間距離(PD) | 50〜80mm |
| 球面と乱視の合計 | 10.00まで |
| プリズム処方 | 対応しない |
球面度数がマイナス側だけなので、遠視(プラスの度数)は選べる範囲に入っていません。範囲外でも内容によっては対応できることがあるので、遠視の人はサポート窓口への問い合わせが先。遠近両用(累進)レンズは、提携の眼鏡店で相談する形。
注文には処方箋が必要。レンズは受注生産で、注文後のキャンセル・返品・交換はできません。
届くまでの日数は頼み方で変わる。公式ECで本体と一緒に頼むと、注文確認後およそ2〜3週間で発送。
本体を買ったあとで付けるなら、本体をjig.jpへ送ってから返ってくるまでが約14営業日。レンズは着脱できない構造で、マニュアルにはjig.jp以外での入れ替えは保証の対象外とあります。
一方でレンズのページは、取扱店での取り付けと「店舗でお取付けしたレンズのお手入れ・修理」にも触れている。眼鏡店で付けるなら、保証がどうなるかを店とjig.jpのサポートの両方に聞いておきたいところ。
保証は手元に届いてから1年
保証規定では、保証期間は製品が手元に届いた日から1年間。対象は本体と充電ケースで、鼻パッドも同じ1年の対象に入ります。眼鏡拭きや充電ケーブルは対象外。普通に使っていて出た製造上の不具合なら、無償で修理か交換です。
家電量販店や眼鏡店で買っても、jig.jpが指定する正規の販売店からなら同じ保証規定が当てはまります(保証規定 第1条)。中古品・転売品・並行輸入品は対象外。
修理を頼むときは領収書や注文履歴の画面など、買ったことを示すものが要るので、捨てずに取っておきましょう。店独自の延長保証は、この保証規定とは別の話です。
10月27日発売。どこで買えるか
| 日付 | 何が始まるか |
|---|---|
| 10月21日(水)正午 | 先行予約の受付(公式EC、ビックカメラ・ヨドバシカメラ・ヤマダデンキのEC など) |
| 10月26日(月) | 公式ECの先行予約の受付最終日 |
| 10月27日(火) | 一般販売。度付きレンズなしは順次発送 |
| 10月28日(水)以降 | 家電量販店と眼鏡店の店頭で順次販売 |
公式ECの先行予約は10月26日(月)まで。家電量販店のECも21日から受け付けていますが、発表文には「先行予約の受付方法、発送時期および店頭販売開始日は販売チャネル・店舗により異なる場合があります」とあります。ほかの店の締め切りは、店ごとの案内を見ることになります。
眼鏡店は、10月20日時点で本体を扱う店が16店舗、度付きレンズに対応する店が80店舗。眼鏡店ごとの店頭販売の開始日は、公式サイトで順に公開される予定です。
店頭での展示・体験の実施状況は店舗ごとに違う、と発表文にあります。かけてみたい人は、出かける前に店へ確かめておくと空振りを防げます。
ちなみに今回の一般販売の前に、2026年4月20日からMakuakeで先行販売がありました。jig.jpの発表では、3週間弱で応援購入総額1億円(実際Makuakeで見たらほぼ2億!)を超えたそうです。Makuakeのプロジェクトは6月29日に終了。
合いそうなのは会議と人前で話す時間が長い人
ここまでの情報だけで考えると、SABERAが向いていそうなのは会議の文字起こしを見ながら話したい人。人前で原稿を見ずに話したい人も当てはまりそう。スマホの通知を確かめるたびにポケットから取り出すのが億劫な人にも、たぶん刺さる。
普段から近視の眼鏡をかけている人なら、度付きレンズで「いつもの眼鏡」をこれに替える選び方もできますな。
あとは、これらがどこまで実用レベルにまで昇華されているか。
逆に、動画やゲームを大きな画面で楽しみたいなら、VITURE Beastのような映像を映すタイプのほうが目的に合っています(無線でつなぐ話はこちらの記事に書きました)。遠視やプリズム処方の度付きが要る人は、先に確かめることが多い製品です。雨や汗の中でかける人と、海外で使いたい人も同じ。


度付き込みで12万5千円ほどを出して、いまの眼鏡をこれに替えるのか。通知と文字起こしのためにもう一本増やすのか。右目だけの緑の文字がどう見えるか、鼻パッドが顔に合うかは、かけてみないと分からないところです。
同系統のスマートグラスとしては、Even G2、Rokid Glassesとの比較も気になるところですな。
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