Steamで販売されている「Lossless Scaling」というソフトウェア。
販売元がSteamであることからゲーム専用のソフトだと思っている人も少なくないでしょう。
しかし実はこれ、ゲームだけでなく動画やその他PCモニターに表示させるもののすべてをアップスケーリング&フレームレートを数倍化することができるんですよね。
実際に使ってみたらかなりいい感じだったので、使い方や機能について解説していきたいと思います。
主な特徴
Lossless Scalingにはざっくりと以下のような特徴があります。
画質の劣化を防ぐスケーリング技術
Lossless Scalingのスケーリング技術では、低解像度のフレームをキャプチャし選択されたアルゴリズムを適用することで、画面の拡大縮小した際のピクセルのぼやけや画質の劣化を防ぎます。
つまり、低解像度のゲームや動画でも、ある程度鮮明な映像で見られるようになるということ。
高解像度フレームの生成
スケーリングされたあとのフレームは、ディスプレイの解像度にあわせて高品質な画像として表示されます。
この際に、ティアリング(映像が左右にずれたように見える現象)やぼやけを防ぐための補正が自動で行われます。
なお、このプロセスは1秒間に数十フレームの速度でリアルタアイムに実行されるので、たとえゲームプレイ中だったとしても遅延を感じることはほとんどありません。(すごい)
ウィンドウモードでのみ動作
事前情報として一点知っておきたいのが、Lossless Scalingはウィンドウモードのみで動作し、排他フルスクリーンモードでは動作しないということ。
ただ、フルスクリーンに近い表示に拡大する機能がついているので、実際はウィンドウモードでありながらフルスクリーン画面のような状態でプレイ&視聴が可能。
つまり、ウィンドウモードの軽快さを保ちながら、フルスクリーンの体験ができるということ。
PCモニターに映すものならなんでも適用可能
そしてLossless Scalingがすごいのが、PCモニターに映すものならなんでも適用可能だということ。
Steamのゲームはもちろん、Xboxゲームパスでもいいし、手持ちの動画やYouTube、そしてキャプチャーボードを介してPCモニターに表示させたSwitchやプレステのゲームにも適用できるのがすごいところ!
↓ たとえばこういうキャプチャーデバイスを使って家庭用ゲーム機をスケーリングします

AMD FSRに対応
AMD FSR(AMD FidelityFX Super Resolution)に対応しているので、GPUの性能を引き出しつつ、ゲームや動画の解像度をを引き上げることができます。
グラフィックボードの負荷を抑えられる!
使い方
Lossless ScalingはSteamで販売されているソフトウェアですが、普通のPCアプリとおなじようにウィンドウ上で操作します。
実際に使うまでの手順は以下の通り。
- Steamでソフトを購入してインストール
- スケーリングを適用したいゲーム or アプリを起動
- Lossless Scalingを起動(先に起動しておいてもOK)
- スケーリングの適用
- 設定の微調整
Lossless Scalingには、細かい設定項目が用意されているので、適用するゲームやアプリごとに微調整して使うのがおすすめ。
設定した項目はプロファイルとして保存しておけるので、次に起動した際にも即座に設定を呼び出せます。
これが実際のLossless Scalingの起動画面。
ポイントとしては、右上にある「スケールを開始」をクリックすると5秒のカウントダウンが始まるので、その間にスケーリングしたいゲームやアプリ画面をクリックして有効化します。

設定項目
スケーリングモード
スケーリングモードは、自動モードとカスタムの2種類があります。
カスタムモードでは画面の拡大率を手動で設定できますが、とくに使い道が感じられないので、基本は自動モードのままでOK。

スケーリング方法
Lossless Scalingの肝となるのが、このスケーリング方法の項目。
種類がたくさんあって最初はわかりにくいかもしれないので、各項目について解説しておきます。

LS1 | 特徴:Lossless Scaling独自のスケーリングアルゴリズム。高品質かつ軽量で、画質とパフォーマンスのバランスが良い。 用途:細かいこだわりがない場合や、安定したスケーリングを求めるならこれ。 |
---|---|
AMD FSR | 特徴:AMDのアップスケーリング技術。低解像度の画像を高解像度に変換する際に画質を保ちつつパフォーマンスを向上。 用途:高性能なスケーリングを求める場合。もちろんAMD GPUに向いているが、他のGPUでも利用可能。 |
NVIDIA Image Scaling | 特徴:NVIDIAの画像スケーリング技術。GPUベースの処理で画像の解像度を引き上げつつパフォーマンスの低下を最小限に抑える。 用途:NVIDIA GPUユーザーに最適。 |
SGSR | 特徴:サブピクセルグリッドを利用したスケーリング技術で、細部の画質を強調。 用途:高解像度ディスプレイで細かいディティールを強調したい場合に有効。 |
バイキュービックCAS | 特徴:バイキュービック保管法にAMDのCAS(Contrast Adaptive Sharpening)を組み合わせたスケーリング技術。鮮明な画質と滑らかさを両立。 用途:主にシャープさを強調したい場合に有効。 |
Anime 4K | 特徴:アニメや手描きスタイルの2Dグラフィックを高品質にスケーリングするための技術。エッジの鮮明さを保ちながら画質を向上。 用途:アニメ調のゲームやGraphicに最適。 |
xBR | 特徴:レトロゲームに特化したスケーリング技術。ドットやピクセルをスムーズに変換。 用途:ドット絵やレトロゲームを高解像度で楽しむのに最適。 |
シャープバイリニア | 特徴:バイリニア保管にシャープ化処理を加えたスケーリング技術で、滑らかさと鮮明な画像を両立。 用途:バイリニア保管のぼやけを軽減したい場合。 |
整数モード | 特徴:ピクセルを整数倍で拡大するシンプルなスケーリング技術。ぼやけを完全に防ぎ、レトロなピクセルアートでも鮮明に表示。 用途:レトロゲームやドット絵で、現場の美しさをそのまま保ちたい場合。 |
直近モード | 特徴:最も基本的なスケーリング技術でピクセルをそのまま拡大する方式。とても軽量でシャープなエッジを保つのが特徴。 用途:PCのスペックに不安がある場合や、ドット絵、レトロゲームに適している。 |
これでどのシーンで、どの方式を選択するべきなのか大方わかるのではないでしょうか。
さらに具体的に解説すると、以下のような感じです。
- 基本的には「FS1」がおすすめ
- 高性能を求めるなら「AMD FSR」「NVIDIA Image Scaling」
- レトロゲームなら「xBR」「整数モード」
- アニメや2Dグラフィックなら「Anime 4K」
- 軽量で汎用性を求めるなら「直近モード」「シャープバイリニア」
ちなみに、私は基本的に一番性能が良さげな「SGSR」メインで運用しています。(実際、いい感じで表示されることが多いです)
フレーム生成
Lossless Scalingのフレーム生成は「オフ」「LSFG 1.1」「LSFG 2.3」の3種類から設定できます。
この内の「LSFG 2.3」にした場合のみ、モードを「×2」「×3」「×4」から選択可能になります。


オフ | 特徴:フレーム生成を無効化します。ゲームやアプリのフレームはそのままスケーリングされる。 用途:フレーム生成を必要としない場合や、すでに高いフレームレートで動作しているゲーム。 |
---|---|
LSFG 1.1 (フレーム生成バージョン1.1) | 特徴:Lossless Scaling Frame Generationの初期バージョン。スケーリング後のフレームを保管して追加のフレームを生成します。一部のゲームでティアリングやちらつきを軽減する効果あり。 用途:PCのスペックが足りていない場合はこちらを選択。軽量でシンプルなアルゴリズムのため安定性が高い。 |
LSFG 2.3 (フレーム生成バージョン2.3) | 特徴:LSFGの最新バージョン。改良されたアルゴリズムで、より自然で高品質なフレーム生成を実現。 用途:高性能なGPUを持つ環境で滑らかな映像を重視する場合。120Hz以上の高リフレッシュレートモニターでの使用推奨。 |
といった感じで、スペックに余裕がある環境で最高品質をもとめるなら「LSFG 2.3」一択となります。
ただ、適用するゲームやアプリなどによって最適な設定は変わってくるので、実際に使ってみながら×2 ~ ×4を適宜選択するようにするのがベター。
Resolution scaleのスライダーは、ゲームやアプリが画面に描画する解像度の設定です。
一番右(100%)でそのままの解像度で描画され、この数値を下げることで解像度が落ちる代わりに、GPUの負荷とフレームレートが向上するというメリットがあります。
もしスペックが足りない場合は、スライダーを左に移動させながら使うと良いということですな。
パフォーマンスモードもおなじような効果があるので、PCのスペックに不安があるときは「オン」にして使うと良いでしょう。

カーソルの設定
「マウスの移動範囲をウィンドウ内に限定する」「カーソルの速度を調整」「カーソルを非表示にする」「カーソルを拡大」の4項目。
とくに使うことがないので、ここはスルーします。
レンダリング設定
レンダリング設定では、GPUが生成するフレームとモニターのリフレッシュレートを同期させる「垂直同期(VSync)」を設定します。
これのおもな目的は「ティアリング(画面が分裂して見える現象)」を防ぐこと。
VSyncには、1/2 ~ 1/4 まであり、1/4に近づくにつれ、滑らかさが低下する代わりにGPRにかかる負荷が下がります。
基本的には「VSync」を選択しておけばOK。もしスペックが足りないようなら、1/2から徐々に下げていきましょう。

フレームの最大レイテンシ
フレームレイテンシとは、入力から結果が画面に表示されるまでの遅延時間のこと。
ここの数字を上げるとフレームバッファ内に保持される未表示のフレーム数が増えます。(「2」にするとバッファに未表示のフレームが2つまで保存されるということ)
基本的にはデフォルトの「1」でOK。

キャプチャAPI
キャプチャAPIは、Windowsの描画速度やフレームの処理速度に関わってくる設定項目。
3種類の項目がありますが、それぞれの特徴を以下に示しておきます。

API | 特徴 | 用途 |
---|---|---|
DXGI | 高速、DirectX対応、ゲーム向け | 高性能ゲームやアプリのキャプチャ |
WGC | モダン設計、高速、安全性が高い | 最新Windows環境でのキャプチャ |
GDI | 汎用性が高い、低速、2D描画に特化 | 古いアプリや低負荷処理 |
まとめ:ハイスペから低スペまで幅広くカバー
各機能について細かく解説したら思ったよりも長い記事になってしまいましたが、「Lossless Scaling」のご紹介でした。
ただ、アップスケーリングやフレームレートを向上させるだけでなく、スペックが低いPCにも対応しているというのが「Lossless Scaling」の最大の特徴。
たとえば、、

私のPCだと最新のモンハンがまともに動かないよ…
といった場合には、PCやグラフィックボードを買い替える前に、Lossless Scalingでの設定を詰めることでまともにプレイできるようになる可能性があるということ。
ちなみに記事執筆時の現在でも、Lossless Scalingは精力的にアップデートが行われており、新しい機能が追加されていっています。
これが数百円~千円ちょっとで手に入るとか、まじでコスパが良すぎるぜ! 作者様には感謝感謝。
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